技能実習生のリアル

人事関連情報

今回は日本に根付きつつある技能実習生制度について、日本とベトナム、両国で人事を担当したことのある田舎人事自らの体験を基に解説します。


なお、基本的に私自身はこの制度自体には肯定的に捉えており、むしろ問題なのは介在する3つの段階にいる各組織の体制によるものだと考えています。

私の個人的な意見としては、日本の労働力不足は今後加速の一途です。

少子高齢化が進む昨今の日本では、移民の受け入れはやむを得ないのです。

正式には技能実習生は移民ではないのですが、実質的には移民と認めざるを得ないでしょう。


制度概要

技能実習の基本理念

制度を運営するOTIT(外国人技能実習機構)のHPに分かりやすく記載されているので引用します。

技能実習制度は、我が国で培われた技能、技術又は知識の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的として創設された制度です。

技能等の適正な修得、習熟又は熟達のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行わなければならないこと、

労働力の需給の調整の手段として行われてはならないこと

が定められています。

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実態との乖離

理念と実態に大きな乖離が起きているのは周知の事実ですね。

現代の奴隷制度等と揶揄されたり、海外(欧米)メディアから批判されることもしばしばです。
下は世界的な(左翼系)メディア英BBCの動画です。

日本で「搾取」される移民労働者たち - BBCニュース
低賃金で長時間働かされた――。日本で「搾取」されたと訴える移民労働者たちをBBCが取材した。世界的服飾ブランドの服を作っていた人や、自殺を図った人もいた。

マスコミ世界代表?だけあって、最もショッキングな内容を切り取って、あたかも、全てがこうだというような表現であることには大きな疑問がありますが、恐らくこのように非常に悪い例が存在するのも事実なのでしょう。

実習生派遣元の国での受け止め方(ベトナム)

私は実際にベトナムで働き、日本の技能実習生制度に関する若いベトナム人の見解を複数耳にしました。

日本語能力検定2級(N2)の、いわゆる日本語ペラペラの女性(元部下)の意見

酷い環境で働いているベトナム人の話をたくさん聞いているので、私は決して(技能実習生に)参加しませんし、親戚や友人で希望する人がいたら止めます。
留学生として渡り、ちゃんとN2に合格した上で、現地(日本)で就職するなど、もっと良い条件で日本に行って働く方法がありますので。

ベトナム(その他開発途上国含む)を、非常に遅れた国と捉えてしまう日本人は多いと思いますが、大都市で働く若いベトナム人で、日本語が話せるようなエリートであれば、当然英語もそれと同様に使いこなし、国内外の様々なメディアに自らアクセスし、情報を正しく収集する事ができるので、東京にいる日本人の若者と同等に多様な情報を取捨選択出来るのです。

その一方で、私の当時の勤め先の企業でも、会社を退職して、技能実習生として日本に渡る準備をすると話す若い従業員が何名かいました。

皆、共通して「日本で働いてお金を稼ぎたい」と言います。

それはそうでしょうね。

ベトナムでは、一般的な仕事では月給3~4万円が相場であり、最低賃金ギリギリであっても毎月約15万円の給料と聞けば夢のある話なのです。

私と、上記の日本語が話せる女性とで、彼らに情報提供をしました(退職の引き留めを兼ねて)が、家族の意向もあり、既に変えられない状況になっていたのです。

ただし、これはコロナ前の話で、現在はそもそも日本へのフライトがほとんど無くなっているので、ベトナム国内で、時機を待っているのでしょう。
なお、現時点ではベトナムはロックダウン状態になってしまっております。

3つの組織の問題点

技能実習生制度で問題を引き起こしてしまう3つの組織の問題点を見ていきましょう。

3つの組織とは、送り出し機関監理団体受入先企業です。

この3つの組織のうち、1つでも酷い業者があれば、たちどころに実習生が厳しい状況に追い込まれてしまうのです。

送り出し機関

では、どのようにして、ベトナム人は技能実習生として日本に渡るのかというと、まずベトナムにある送り出し機関に登録します。
送り出し機関はベトナム政府から免許を取得した民間企業です。

送り出し機関の方で、ビザの取得や日越両政府とのやり取りを実施し、日本側の受け入れを担う監理団体とその先にある受入先企業と調整します。

送り出し期間は日本語学校を運営している場合もあります。

この送り出し機関も玉石混交で、高い料金に見合った、質の高いサポートをしている会社もあれば、全くその逆で、正に奴隷商人といえるようなインチキ臭い会社もあるというのが実態です。

費用(技能実習生が支払う料金)

この送り出し機関の求める料金の相場が一人当たり100万円ほどです。
航空券代なども含みます。
必要最小限の日本語が身につくまで全寮制の日本語学校で徹底的に学ばせる、優れた機関もあります。

私が現地で知り合った日本人(飲み仲間)とベトナム人の同僚の方々は、本当に実習生たちの人生を背負う覚悟を持った、人情味のあるビジネスパーソンと、その仲間たちでした。

首都ハノイや経済都市ホーチミン市であっても通常月給が3〜4万円という中で100万円というのは、日本人からすれば700〜800万円に相当する大金です。
当然本人が一人で工面するのではなく、親戚を回って出資者を集めるのです。

概ね、一度更新し、計3年間(1年と2年)の日本滞在というのが、一般的な技能実習生の働き方なので、本人は、日本で毎月5〜10万円(平均7万円とします)を貯金し、3年間(36か月)で約250万円の貯金を作って、出資してくれた親戚に2.5倍にして返すのです。


日本からもゆうちょ銀行などで国際送金が出来るので、高い送金手数料を払って、送金することもあるようです。

日本の外務省は、外国人の就労に関してかなり厳しく、提出書類も膨大です。
実習生応募者は、これら難易度の高い課題を一つ一つクリアしながら、準備を進めて、場合によっては日本語学校に通い、必要最低限の日本語を覚えてから日本に行きます。

ベトナム・ハノイ国際空港での一幕

私がベトナムから日本に帰省するときには、ハノイ国際空港からLCC(格安航空会社)、ベトジェット航空などを利用しました(コロナ前で片道2~3万円)が、同じフライトのチェックインカウンターの列には毎度たくさんの技能実習生がいたものです。

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空港には家族が激励に来ていて、しばらくの別れを惜しみ、お互い涙を流しているのが目に付きました。
皆、日本で働くことへの期待感と、見知らぬ国に行くことへの不安感の両方を滲ませたような笑顔が印象的でした。

中には、そこまで若くない(30〜40代と思しき)人もいました。
(胡散臭い)ブローカーみたいな日本人とベトナム人たちが引率していました。
日本語で聞こえてくる話しぶりからして、送り出し機関の従業員のようでした。

実習生たちの、お世辞にも綺麗とは言えない装いと比べて、高級感のある服装で、正直に言って、現代の奴隷商人に見えてしまいました。

監理団体

続いて、日本に渡って来た技能実習生をベトナム等の国から受け入れ、企業に受け入れて貰うに当たっての実務を担当し、実習生が抱える悩みごとを解決するのが監理団体と呼ばれる組織です。

受け入れ先企業監理団体に実習生の人数×2〜3万円の料金を払っているのです。

監理団体も日本で許可を得た公的機関や民間企業ですが、見事な程に玉石混交です。


上記の料金に全く見合わない(何もしない)奴隷商人のような組織が存在するのは間違いありません。

制度としては、下記のように定められています。

監理団体は、その責務として、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護について重要な役割を果たすものであることを自覚し、実習監理の責任を適切に果たすこととされています。監理団体は法律に則り、実習実施者と技能実習生との間の雇用関係の成立のあっせんや実習実施者に対する指導、技能実習生の相談対応などを行わなければなりません。

外国人技能実習機構

ベトナム在職時に知り合った優良な送り出し機関幹部の日本人の方から聞いた話では、

過半数の監理団体は理念の通りの仕事はしていないですね。

困りごとがあれば全てベトナムの送り出し機関に丸投げというのが実態です。

比較対象としては、まだまだ少ないけれど、特定技能登録支援機関

登録支援機関の多くは、丸投げせずに、自ら調べ、分からないことを私たちに確認しながら自ら進めてくれます。

田舎人事さんが日本帰国後に取引するなら登録支援機関から外国人労働者関連の事業を始めて、後から監理団体も兼務するようになったというような会社さんにした方がトラブルが少なく済みますよ。

なお、特定技能登録支援機関については、別記事で触れますが、今後技能実習生制度よりも期待が持てる新制度です。

これはもちろん、この方の主観が大きく影響している話ではありますが、プロの視点からの情報なので実態から大きく外れた意見ではないと思います。

なお、私の知人の会社(新潟県、運輸関連)では、技能実習生を受け入れていますが、実習生受け入れを最近始めたような田舎だからなのか、担当している監理団体が真っ当な対応をしており、細かい実習生へのフォローアップをしているようです。
定期的に本人たちを面会し、困りごとがあれば監理団体で雇用しているベトナム人通訳を交えて細かくヒアリングも出来ているようです。

なので、監理団体の全てがヒドいという訳ではないということは言い添えておきます。

受入先企業

最後に、実習生の受け入れ先企業についてです。
ここが多くの場合、最も大きな問題を孕んでおり、実習生を奴隷のように扱っているケースが散見されるのです。

多くの受け入れ先企業は、技能実習という教育的な側面を一切持たず(雇われる側の意識もそうですが)、安くて元気な労働力としか考えていないというのが実態です。

残業代も払わず、最低賃金の月給で使い倒すような酷い会社も、実際にはあるようです。

更には、節約してお金を貯めたいという実習生側の要望もありますが、6畳1間のような狭い部屋で男性4人で生活するなど、かなり窮屈な環境で生活する実習生も多いようです。

ベトナムでも、首都などは家賃が地方よりも高いため、友達や兄弟とルームシェアするのが一般的ではありますが、それでも2人での共同生活です。

かなり過酷な環境なので、逃げ出してしまうのも無理もないように感じます。

例えば、上で挙げた知人(新潟)の会社では、最低賃金ギリギリではありつつも、残業代はちゃんと働いた分だけ法定通り支払い、アパートも3人で2LDK(家賃6万円)の部屋に住んでいる為、出稼ぎの外国人にとっては十分な環境です。
本人たちも、3年と言わずもっと長く働きたいと考えるくらい恵まれた条件のようです。
その会社からすれば、単純作業とはいえ、重筋作業なので、イマドキの若い日本人が定着するのが難しいので、丁度良い労働力になっているようで「今後も大事にしたい」という企業側の本音が伺える、需要と供給が均衡した好例と言えます。

それでも、本来の主旨からは外れ、完全に労働力の需給バランスで成り立っているのが現実であり、そこに対して厳しくチェックをしている訳でもないのです。

生活環境・文化の違い

まれに技能実習生で来ているベトナム人が豚などを牧場から盗み、アパートで捌いて食べたみたいなニュースが出て来ます。
ベトナムの地方出身のベトナム人であれば、実家には放し飼いの動物がいて、しめ方などは自然と身に着けていることもあります。
その辺は、普通の日本人ならしないような犯罪に対しても敷居が低く、気軽に実行してしまうようなところがあるのも理解出来ます。

根本的に違う考え方ですね。

また、衛生観念清潔に関する意識も大きく違うので、我々日本人の一般的な感覚でいえば、アパートも余りキレイには使えないことが多いです。
特に男性。笑
なので、アパート入居時に求められる身元保証人の代わりとなる保証料支払いの契約を保証会社から拒否されることも多くあるようです。
そうなると、住むところを探すのにもかなり苦労します。
ベトナム人と分かると、アパートの管理会社が入居を断るということも実際に起きているようです。




以上、非常に大変な中で、日々奮闘する技能実習生についてご理解頂ければ幸いです。

もし、この記事を読む方で技能実習生と実際に接する場合、様々な視点から彼らの立場を考え、可能であればサポートして頂けたら嬉しいです。


また、私たち日本人が実習生を受け入れる場合、実習生のイメージがその派遣元の国のイメージとなってしまいますよね?

ベトナム人実習生に豚を食べられてしまった農家の方にとって、ベトナムのイメージは恐らく最低でしょう。

逆に、ベトナム人実習生にとっては、普段接する日本人のイメージが、日本のイメージそのものになってしまうことを忘れてはなりません。

今後、国際化・移民の増加は避けられないと考えると、より国際人として恥ずかしくない立ち振る舞いが私たちにも求められてくると思います。

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略歴は、
地元駅弁→大手企業人事担当者→バックパッカー→海外転職(人事マネージャー)→コロナで地元に帰って中小企業の人事担当者
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